■練りに練られたサブ・キャラクターたち
ピーター・ソーントンのキャラクターをやっているダナ・エルカーもいい。この人は『スティング』の中でいちばんオイシい刑事のキャラクターをやっている、演技派の人です。「マクガイバー」の中では監督をやってます。
ジャック・ダルトンのキャラクターは、腐れ縁で儲け仕事があるぞってやってくると、必ず後ろにコワいお兄さんを連れてくる、マクガイバーにとっては迷惑至極なんだけど、ようするに断り切れない腐れ縁の友達なんですね。ダルトンは『ロックフォード』のエンジェルみたいな存在です。ムショ仲間のエンジェルから「ジム、ちょっと会ってくれねえかな」という電話がかかってくると、ロックフォードはイヤな予感がする。ただ、刑務所の中でよくしてもらったから、断れないんですね。気のいい奴でもあるし。でも、とんでもない事件を持ち込んでくるので、ロックフォードはえらい目に遭うんです。毎シーズン、エンジェルの出てくる話は名物ストーリーになっているんですが、ダルトンはそれの『インディ・ジョーンズ』版といってもいいかもしれません。宝探しをなりわいにしているので、共産圏のどこかにおいしい話がある、みたいな話を聞きつけて、よせばいいのに、ほとんどの連中が近寄らないのに、飛行機の操縦ができるからやばい仕事にどんどん入り込んでいく。でも自分で解決できないからと「マクガイバーを呼ぼう」と。マクガイバーも「困ったヤツだ」と思いながらも、ダルトンとはウマが合う。昔何回か、二人でけっこういい仕事をこなしてきたみたいなところがあったように描かれていて、本当にキャラクターが練れています。
ペニーもいいキャラクターですね。見てくれは普通の女の子なんだけど、実はかなりアタマが切れて、未完成の峰不二子みたいなキャラクターなんです。勘が強くてアタマも切れて、プランニングはできるんだけど、悲しいかな実行力がない。あれが成長して一人前になれば峰不二子になるんですが。そこで、実行力の部分はマクガイバーに押し付ける。これまた、「マック、ちょっと聞いてほしいんだけど…」と言ってはやってくるけれど、必ず危ない事件にからんでいる。マクガイバーとしてはやめてほしんだけど、結局事件に巻き込まれて大騒ぎになる。
マクガイバーにとっては1円にもならないんだけど、ダルトンとペニーのことを必ず助けてあげる。こういうストーリーは他にないんですよ。非常に珍しい。アメリカでもこんなストーリー・パターンの作品はないんですよ。
それから、歌手もやっている(→シルヴァーヘッド)マイケル・デ・バレスという人が演じているマードック。このキャラクターは、どちらかと言うと『87分署』のデフマンに近い、マクガイバーを目の敵にするフェニックス財団の鬼門みたいなキャラクター。天才科学者で変装の名人で、血も涙もない男で、マクガイバーをへこませることが人生の楽しみ。しかも毎回死ぬシークエンスなんだけど必ず生き返ってくるという、すごくオイシい役で、『マクガイバー』のシリーズ後半の目玉のキャラクターになってきます。
「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録
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