2017/10/19

再録30 M05‘マクガイバー’登場の時代背景 (1)

■時代の先を読んだメッセージ

この番組の先見の明があるところは、いわゆる宗教がらみの過激派が世界の新たな火種になるとか、マフィアのようなビジネスとして犯罪をやる連中が倒しても倒しても倒しきれないほどでてくる、と言うことが鮮明に描かれている点です。

 冷戦が終わった後に、ベルリンの壁が崩れたときもそうなんですが、みんな「新しい時代が来る」と、その瞬間だけ思っていた。「これからはいいことが続くんじゃないか」と夢見たんですが、『マクガイバー」は「そうはいきませんよ」と。善意で、なんとか紛争を調停しようとする政治家が暗殺されようとなるエピソードがいっぱいあるんですよ。これは、イギリスの要素ですね。

 マクガイバーは明らかに時代に先んじていました。「世界はずうっとこのままですよ。国は変われど、ひとが変われど、犯罪もなくならないし、独裁国家みたいなところもあれば、貧しい人たちをいじめ抜く政治家も決してなくならない。でも、それをはね返せるのは人間だけなんだ」というマクガイバーたちの主張は非常に力強い。だから、マクガイバーって、もっと誉めてあげればいいのにって、昔から思っていました。

 フェニックス財団というのも、考えてみるとかなりキナ臭い。財団といっておきながら、そうとう政府の息がかかっていて、軍が全面に出るとまずい、CIAが出るともっとまずいという場面に、民間の財団を隠れ蓑にして解決するという、非常に今日的な設定です。

どちらかと言うと、イギリスのドラマづくりに近いですよ。イギリス人は、いかにもありそうな話を作るのがうまいですね。『電撃スパイ作戦』のネメシスのように、元国連や各国の情報部にいた連中がリタイアして作った、国連でもCIAでもMI6でもカバーできない部分を補う民間スパイ組織みたいな.そんなのあるわけないんだけど、ホントは。

「パラマウント・ビデオ・ホームページ:海外テレビドラマ評論家 池田憲章が語る!」 2005年 再録

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