2017/08/28

第33回 ミスター・スポックのキャスティング

 『スタートレック』のキャスティングでは、ミスター・スポック役のレナード・ニモイがその論理的で知的なセリフでバルカン人と地球人のハーフという神秘性もあって多くの女性ファンが生まれた。

 だが、ロッデンベリーは当初、別の俳優を考えていた。『スパイ大作戦』で有名になる変装の達人パリス役のマーティン・ランドーだった。舞台中心の俳優だが『ミステリー・ゾーン』や『アウターリミッツ』『コンバット』のやたら印象に残るゲスト俳優で、ロッデンベリーは “マーティン・ランドーなら” と考えていたのだ。ところが交渉してみると「TVシリーズのレギュラーには興味がないんだ。舞台の仕事を優先しているから。ゲスト出演ならいくらでも受けますよ」という返事でロッデンベリーは諦めざるを得なかった。

 ではなぜ『スパイ大作戦』のレギュラー(第一~三シーズン)になったのか? ブルース・ゲラーの出演依頼にも同じ返事だったが、ゲラーはこう言ったのだ。「ああ、大丈夫。このシリーズは毎回違うスペシャリストを集めるので、7話に一回くらいの出演なんだよ。あと、奥さんのバーバラ・ベインも美人スパイ役で出演してほしい」。パイロットフィルムの第一話の脚本(エミー賞脚本部門賞を受賞する)も演じがいがあって、ゲラーの交渉のうまさだった。同じデジル・プロの別のステージで『スパイ大作戦』と『スタートレック/宇宙大作戦』は製作されていた。

 不思議な縁でランドーの降板後、レナード・ニモイが『スパイ大作戦』にキャスティングされるのもニモイの演技が評価されたからだ。

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