2017/08/30

第56回 実に行動的だったアイアンサイド

 アイアンサイドが本当にアームチェア・ディテクティブな車椅子の警察官だったらTVシリーズとしては退屈な物になっただろう。だが『鬼警部アイアンサイド』(1967-75)は車椅子を中型トラック(第一~第二シーズンはまるで囚人護送車の改造かという古風な中型トラックだった)の後部に乗り、黒人青年マーク・サンガーが運転手となり、あらゆる事件現場へ乗り出していく。部下のブラウン刑事はイブ・ホイットフィールド巡査を乗せてもう一台の愛車で進んでいく。

 このスタイルで、行動力を見せ、事件現場でシャーロック・ホームズばりにアイサンサイドは普通の警察官が見つけられない、気づかない事件の手がかりを見つけていく。ブラウン刑事やイブ、後半ではフラン・ベルディング巡査やマークと話している時は優しさを秘めた深みのある声、ひとたび事件が起きるや決断力と力強い発言の数々。日本語版の若山弦蔵の声は時にレイモンド・バー本人よりアイアンサイドを表現していて『アイアンサイド』から『刑事コロンボ』『刑事コジャック』『ロックフォード氏の事件メモ』の1966~76年ぐらいの日本語版の充実度、完成度が忘れられない。

 日本の地上波のTVゴールデン・タイムで堂々と外国TVシリーズが放送されていた。外国TVファンになったのも、この時代に空気のようにすぐれた作品を見ていたためと痛感する。

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