2017/08/30

第70回 『刑事コロンボ』の生みの親」

 『刑事コロンボ』(1968-78)を生み出した脚本家ウィリアム・リンクとリチャード・レビンソンは1960年代前半フォースター・プロ製作の『バークにまかせろ』(1963-66)でメイン・ライターとして評判をとった。『バークにまかせろ』は、アーロン・スペリングがプロデューサーのTVミステリーだ。ロールス・ロイスを愛車にする大富豪のロサンゼルスの刑事部長エイモス・バーク(ジーン・バリー、日本語版の声はローン・レンジャーやモーガン警部も演じていた若山弦蔵)がいろいろな目撃者と会話するうちに、会話の中から事件の真相をつかんでいく『刑事コロンボ』の原点のようなスタイルだった。SF作家ハーラン・エリスンも脚本を書いていた。

 サミー・デイビスJr. が目撃者で、バークが「君がボードビリアンのコードウェナー・バードかね?」と聞くと、サミーが机の上に跳び上がってタップを踊りながら「そうよ、俺の人生は17から曲がりっぱなしよ」と歌い、「自分のことかよ」と、TVの前で引っくり返ったことがある。

 フォースター・プロは、デビッド・パウエル、デビッド・ニーブン、アイダ・ルピノ(もう一人は誰だっけ?)という映画スターが作った製作会社で、友人のスターが友情出演で1分ぐらいカメオ出演することがあった。後に『バットマン』でビルの壁をバットマンとロビンがロープを伝って登っていくと、窓から人気者のスターが出てきて会話するカメオ出演が話題になったけど、『バークにまかせろ』はその走りだった。どこかセリフにユーモアがあって、イギリスのミステリー作家アガサ・クリスティの『ポワロ』や『ミス・マープル』を愛したレヴィンソン&リンクの好みが出ていて、それは『刑事コロンボ』にもつながる個性だった。

 この『バークにまかせろ』のゲストで女性私立探偵のハニー・ウエスト(アン・フランシス)が主演し、彼女を主役にスピン・オフしたテレビ番組が『ハニーにおまかせ』(1965-66)であった。ヒロインが主人公になったアメリカ初のTVミステリー番組であった。『女刑事ペパー』や『チャーリーズ・エンジェル』は、その後継者なのであった。

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