2017/08/30

第65回 虚無的な『インベーダー』の魅力

 若き建築家デビッド・ヴィンセント(ロイ・シネス)が主人公で、ヴィンセント以外のレギュラーがいないために。俳優費用に余裕があって『インベーダー』(1967-68)のゲスト俳優には見応えのあるキャストが多かった。J・D・キャノン、ダイアン・ベイカー、マイケル・レニー、バージェス・メレディス、エドワード・G・ロビンソン、ジャック・ロード、ウィリアム・ウィンダム・・・インベーダーの幹部、円盤を目撃した人物、インベーダーに利用される政治家や実業家、軍人、他のTVシリーズではないパターンで『逃亡者』を製作したクイン・マーチンプロならではのTVシリーズだった。

 インベーダーを目撃し、あるいは秘密を知られただけで心臓麻痺(首筋をその円型の手の平サイズのマシンで押さえると殺せる演出がショッキングだった)で殺すシーンも何度もあり、この意味なく人が殺される描写は普通のTVミステリーではありえない描写でSFだからでインベーダーの非人間性を表す描写として抜群であった。アーウィン・アレン作品とよく比較して語られる『インベーダー』だがむしろイギリスの『プリズナーNo.6』の人間の持つダークサイドと比べて論じたほうがいいかもしれない。

 ヴィンセントの声は俳優の露口茂が演じ(名演だった!)翻訳は木原たけし、東北新社の『アウターリミッツ』『ラットパトロール』の小林守夫ディレクターが日本語版をまとめあげた。小林守夫ディレクターは後に『ヒルストリート・ブルース』の日本語版も担当する。人間群像をさばく演出は『インベーダー』でも情感描写の部分で発揮されていた。

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