2017/08/30

第69回 スマートな味わいの『スパイのライセンス』

 甘いマスクとスタイルあいい映画俳優ロバート・ワグナーは若手の伸び盛りだったが、もうひとつ映画のヒット作に恵まれなかった。ユニヴァーサルTVの『スパイのライセンス』(1968-70)(初期は『プロスパイ』というタイトルもあった)は、スパイ物のTVミステリの中で異色の味わいがあって、アレックス・マンディーというロバート・ワグナー演じる男が天才的な怪盗で、SIAというアメリカ政府の諜報機関がマンディーに依頼して、敵国やテロ組織、陰謀団の秘密や金庫の財宝を盗ませるというのがメイン・ストーリーだった。監獄にいるマンディーを協力すれば、とりあえず自由の身にしてやるという設定だが、シリアスというよりもユーモアタッチがそこにあって実に不思議な設定だった。

 この浮世離れした設定とキャラクターをレスリー・スティーブンスが1話から3話までプロデューサー、監督、脚本、監督としてフォーマットを完成させ、軽快なヒット作に成長した。

 日本語版では城達也がロバート・ワグナーを演じ、グレゴリー・ペックの『ローマの休日』とも違う若々しい声で女性ファンを魅了した。ジーン・L・クーンもプロデューサーとして参加し、脚本とプロデューサーとして育てたのがグレン・A・ラーソンであった。グレン・A・ラーソンは最終2本をプロデューサー、脚本として参加、ジョセフ・サージェント監督の最終戦争物と環境汚染の危機というSFタッチの異色作でラーソンの才能を見せ付ける好編だった。

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